
2月中旬から移動中に読んでいた、吉川英治の「新・平家物語」がついに最終巻の第16巻となった。既に平家は壇ノ浦で滅び、あとは義経の最後を残すのみとなった。吉川の「完結のことば」は先に読んでしまったので、7年間の苦闘と感慨は周知だ。だから、この最終巻は、一枚、一枚を大事に読んでいる。保元・平治の乱に始まる、400年の平安時代末期の朝廷、源平三つ巴の混乱。「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響き有り。沙羅双樹の花の色、盛者必衰のことわりをあらわす。奢れる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。たけき者も遂には滅びぬ、偏に風の前の塵に同じ。」 ローマも、ヨーロッパも、中国も、歴史は皆似たり寄ったりかも知れない。「国を永遠に持続する事はできない。ただ、長持ちさせられるかどうかだ」と書いたのは塩野七生だが、「人」の人生も又同様。平家物語は、「人の死の形」の物語のように読めた。しかし、東北から九州まで日本全土を舞台にした展開は、迫力があった。